心躍るひととき

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こまつ座『きらめく星座』感想(2023/4/9・紀伊國屋サザンシアター)

こまつ座の『きらめく星座』を観劇してきました。

時代は昭和初期、舞台は浅草のレコード店「オデオン堂」。

第二次世界大戦前夜までの1年を描いた物語」ということで、重い、暗いストーリーかと思ったら、良い意味で裏切られました~

笑いあり、涙あり、そして観劇後はかなりセンチメンタルな気分に…

 

こまつ座『きらめく星座』感想まとめ

※ネタバレ含みます

きらめく星座

画像引用元:https://store.kinokuniya.co.jp/event/1673758855/

 

「きらめく星座」は、太平洋戦争が始まる前夜からさかのぼって1年間の、小笠原家で暮らす人々を描いた物語。

舞台は浅草にあるレコード店「オデオン堂」で、小笠原家の人たちは音楽が大好き。

ジャズや当時の歌謡曲も劇中に登場します。

「この状況で?」ってときでもお構いなしに大合唱する小笠原家の人たち。

 

浅草という場所柄、下町を感じる言い回しや振舞いが「寅さん」を思い出させます。

粋で人の温かみや人情みたいなものを感じたなぁ。

 

そんな小笠原家で暮らす人たちを見ていると、思わず目をそむけたくなるような暗い時代であることを、つい忘れてしまいます。

 

会場からは何度も笑い声が沸き起こるくらい、楽しくて笑えるシーンもたくさんあります。

でも、ふとした場面で「戦争」が頭をよぎり、どんより暗い気持ちにさせるのです。

思わず笑ってしまうようなユーモラスな場面が、暗く悲しい気持ちを、より際立たせるような気がしました。

 

序盤から物語はテンポよく進み、舞台上の俳優さんたちの軽快な会話が心地よく、その存在がとっても自然で、すぐ物語に惹きこまれていきました。

 

特に、お母さんが魅力的。

お母さん(小笠原ふじ)を演じるのは松岡依都美さん

後妻で元歌手という経歴の持ち主で、歌手を諦めてオデオン堂に嫁いできました。

このお母さんが、とっても素敵なのです!

明るく朗らかで、ポジティブ!

いつもご機嫌!

でも決して能天気ではく、機転が利いて細やかな気遣いがしっかりできる女性。

憧れる~。

はじめの方、お母さんの着物の袖が階段の手すりに引っかかって「ビリっ」と破けてしまうというアクシデントが😱

もちろん、ご本人も周りの俳優も、何事もなかったかのように物語は進んでいったけど、私は気になってちょっと集中力が途切れてしまった😅

こんなちょっとしたハプニングも生の舞台ならではで楽しいですけどねっ!

 

印象的だったのが、オデオン堂を閉店する前夜のお母さんの姿でした。

その時、初めて「私がもっとしっかりしていれば」と暗い表情を見せた、そのギャップに胸がギュッと締め付けられる思いだった。

その後、すぐ周りに励まされて、腰に手を当てて(たかな?)ぐびっとビールを飲みほすのですが。

ここでも笑いをとるお母さん。

 

小笠原みさを(娘)役の瀬戸さおりさんも輝いていたな~

オデオン堂のために文通相手の愛国主義者の男性と結婚するんだけど、女学生から母になろうとする姿、夫の病気のことなど、心の葛藤がよく伝わってきた。

 

その、みさをの結婚相手、小笠原源次郎(粟野浩史さん)は、一幕ではかなりの愛国主義者っぷり。

まさに「お国のため」「天皇陛下万歳」が彼の中では正義なのだ。

 

でも一幕ラスト、「脱走兵『正一』の居所を教えろ」と憲兵から強く言われるシーン。

みさをがギューッと源次郎の手を握ると、複雑な表情で「知らない」と嘘をつき、正一をかばうのです😭(いいやつじゃんー😭)

このシーンには、ジーンときたなー。

このときの瀬戸さんの演技も最高。

そんな源次郎も、徐々にオデオン堂の人たちに影響され、徐々に小笠原家の人たちになじんでいって…

その光景がまたなんとも温かい気持ちに。

 

小笠原家に間借りをしている竹田さん(大鷹明良さん)と森本くん(後藤浩明さん)

このお二人も重要な存在。

 

森本くんはピアノの生演奏をちょいちょい披露してくれて、とっても素敵でした💕✨

(卵のシーンのピアノ、面白かったー)

生演奏が入ることで、舞台の魅力が大きく上がります!

 

今回、初参加という小笠原家の長男、正一役には、村井良大さん

とあるインタビュー記事で、みさを役の瀬戸さおりさんが「前からずっと小笠原家の人みたい」おっしゃっていて、今回の公演を観て納得。

私にとっては、この公演自体が「きらめく星座」初観劇だったので、前回から引き続き出演している役者さんとかは意識せずに観劇したのだけど、

俳優さんたちの姿が本当にリアルで自然で、そこに「オデオン堂」が存在しているかのようでした。

もちろん、初参加の村井良大さんも含めて。

 

「間」とか「テンポ」も絶妙で、約3時間という上演時間、物語にどっぷり没入してしまい、あっという間に終わってしまった感じ。

笑いどころが随所に盛り込まれているので、そこまで重く沈んだ気持ちになることなく観ることができたかな。

でも、物語の最初と最後、舞台上の全員がガスマスクのようなお面を付けている、というところが、観劇後、感傷的になる要因のひとつかもしれません。

 

さて、この作品の魅力のひとつでもある、昭和初期にヒットした歌謡曲がたくさん出てくるところ。

個人的に、知っている曲はなかったけど、楽しめました!

う~ん、昭和歌謡って感じ~🎵

改めて、当時の音楽って、歌詞がストレートに伝わってくるし、分かりやすい!

現代の音楽には無い魅力を感じました。新鮮!

 

村井さんの歌もとっても素敵でしたよ✨

指揮が苦手だったそうだけど、本番ではぴったり合っていてお上手でした!

もっと聴きたかったなー、今度はミュージカルぜひ観てみたい!

 

物語の最後、出征する青年2人のために、お母さんが「青空」を歌うシーン。

あそこが一番心に響いたな。

戦地へ行く前に歌を聴こう!とやってきた青年。

でも、レコードは処分してしまった。

諦めかけた青年に向かってお母さんは「私が歌う」と、かつてのライバルの歌を歌って聴かせるのです。

どんな思いで歌ってたのだろう、とか、この出征する若者たちの将来を考えると涙が止まらなかったー。

心地よくお母さんの歌を聴いていたところに、「カーン、カーン」と不穏な警報音が鳴る。

あの胸のざわつく感じ、今も心に残ってる。

その他、挙げたらきりがないのだけど、観劇後も目に浮かぶシーンがたくさんあります。

これからも、上演し続けてほしい作品です。

 

全国公演もあるので、たくさんの人に観てもらいたいです。

生きるのがしんどかったり、生きる意味や希望を見出せない人、理由もなくモヤモヤしてる人などなど。

(あるよね、誰でもそんなとき…)

きっと何か心に得るものがあると思うのでした。

 

観劇日、4月9日は井上ひさしの命日とのことで、ロビーに写真とお花が飾られていました。

(素敵な作品を残してくれたことに感謝です)

こまつ座『きらめく星座』出演者・公演情報

【出演】

小笠原ふじ:松岡依都美さん

小笠原信吉:久保酎吉さん

小笠原正一:村井良大さん

小笠原源次郎:粟野浩史さん

小笠原みさを:瀬戸さおりさん

森本忠夫:後藤浩明さん

防共護國団団員 甲:髙倉直人さん

防共護國団団員 乙:小比類巻諒介さん

憲兵伍長権藤三郎:木村靖司さん

竹田慶介:大鷹明良さん

 

【公演情報】

こまつ座第146回公演『きらめく星座』

★東京公演★

2023年4月8日(土)~4月23日(日)@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

★全国公演★

5月7日(日)~14日(日) 北海道演劇鑑賞会 ※会員制公演

5月20日(土)~27日(土) 神奈川演劇鑑賞会 ※会員制公演

5月29日(月)~31日(水) 福島演劇鑑賞会 ※会員制公演

6月3日(土) 山形・川西町フレンドリープラザ

6月9日(金) 群馬・高崎芸術劇場

6月18日(日) 大分・J:COM ホルトホール大分

上演時間:3時間予定(休憩含む)

 

作:井上ひさし

演出:栗山民也

 

(参考サイト)

こまつ座

【公演NEWS】こまつ座第 146 回公演『きらめく星座』開幕コメントと舞台写真が届きました! 感激観劇レポ|おけぴネット

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA」について

東京メトロ新宿三丁目駅」のE8出口から徒歩5分。

新宿高島屋ともつながっているので、アクセス良いです。

会場内にコインロッカーあり(100円返却あり)

トイレは個数少ないけど、客席数少ないし、同建物内のニトリのトイレもあるので心配ないと思われます。

 

座席は16列目のサイドブロック、センター寄り。

前の座席との段差が小さいので、前に座る人によっては舞台が見づらくなるかも。

今回は、ちょうど前に座る人の頭と頭の間からステージほぼ全体が見える状態だったので見やすかったです。

16列目で舞台までの距離はあるものの、顔の識別はできる範囲。

細かい表情を見るにはオペラグラス必要かな。

マイクなしでのセリフ、とくに普通のトーンでの会話は、ボリュームは大きくはないけど、セリフはちゃんと聞き取れました!

さすが俳優さん!と変なところで感心😅

(ミュージカルなどマイク装着してる公演を観ることがほとんどなので)

会場は清潔感あり、椅子の座り心地もスペース的にも快適でした!

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