音楽劇『人形の家』観劇レポート(2022/09/08)
9月8日(木)、俳優座劇場プロデュースの音楽劇『人形の家』を観劇。
土居裕子さんを見たいがために取ったチケットでしたが、他の俳優さんたち、演出、音楽などなど、見どころ満載のこちらの舞台、たっぷり堪能してまいりました!!
あらすじ
幼い子供たちに慕われ、夫には可憐な妻として可愛がられるノーラ。夫ヘルメルは弁護士から間もなく銀行の頭取へ就任することが決まっている。ある日、クロクスタと名乗る男が訪ねてくる。彼は銀行に勤めているが評判が良くなく、ヘルメルは就任とともに彼を解雇しようとしていた。それをやめさせる為、ノーラからヘルメルに頼むようやって来たのだ。
実はクロクスタはノーラの過去の秘密を握っていた。ヘルメルが重病になり多額の療養費が必要になった時、ノーラは借用書の保証人のサインを偽造してヘルメルに内緒で借金をしていた。クロクスタはその借金の相手であり、解雇されるならこの事実を暴露すると脅す。
ノーラは愛する家族の生活が壊れてしまわぬよう、必死にヘルメルに懇願するのだが……。
出演
ノーラ 土居裕子
ヘルメル 大場泰正
クロクスタ 畠中 洋
リンデ夫人 髙橋美沙
ドクトル・ランク 進藤 忠
ヘレーネ 長浜奈津子
アンサンブル
本田玲央/納田洸太/仙崎貴子/白倉裕人/音道あいり
全体の感想
久しぶりの俳優座。
客席に入ると、舞台の中心に置かれた大きな円形の壁にクリムトの絵が!
クリムト好きの私は、これにテンションが上がってしまった😆
「接吻」と「ユディト」。確か。
なんでこの絵なのか、と考えると、
「接吻」はもちろん愛し合う夫婦よね。
ユディトは男の首を切り落とす女だったか?
いろいろ想像を巡らせるのも楽しい。
いいチョイスだな~とか思いつつ、
入り口でいただいたプログラムにじっくり目を通していると、開演の時間に。
物語は「ノーラ、ノーラ~~~」というアンサンブルの歌声でスタート。
そして、中にいたアンサンブルが中央の丸い壁が開けると、舞台上はノーラ家族が住む家の居間になっています。
このセットが、北欧感たっぷりの作りで美しくて、隅々まで見てしまった。
上の方の飾りとか、壁の内側の絵はミュシャっぽかったけど、どうだろう?定かではない…。
上手だったので、上手の内側の絵は見えなかった。
やっぱり中央よりの席が良いですね。
さて、こちらの舞台、今回3度目の公演とのことですが、私は初めて見ました。
あらすじだけ読んで見たけど、分かりやすい演出のおかげで内容はしっかり理解できました。
第2幕のストーリー展開が面白かった。
1幕よりも引き込まれました。
そして、音楽とアンサンブルがこの舞台の重要な要素になってると思いました。
物語をより分かりやすくし、その場の空気感をうまく表現していた。
アンサンブルのコーラスも美しかったです。
音楽については、幸せな場面でもどこか不穏な感じが漂っているように感じて、最初からこの幸せは作り物だったんだなって、見終えた後思ったりして。
照明の使い方も印象に残ってます。
そんなに舞台を見慣れていない私でも、分かりやすくて見やすい作品に感じました。
違和感なく、すーっと入ってくる感じ。
物語の最後には、タイトルの意味が分かったり、予想していたよりも話の奥深さを感じたり。
150年くらい前の作品なのに、人間の本質とか、心の闇みたいなのって、変わらないものなんだな、とかいろいろ考えさせられたストーリー。
そして何より、役者さんやこの舞台つくった方々凄いなって改めて実感。
大感動、とか、大きく心揺さぶられる、とかではないけど、なんかジーンと心に残るものがありました。
やっぱり土居裕子さん素敵!
舞台はノーラの家の居間。
このセットはずっと変わらず、物語はここの居間を中心に数日に起きた出来事の話。
たった数日で人の気持ちってこんなにも変わるんだな、と。
冒頭、土居裕子さんの「マカロン」はとってもかわいらしくて、ノーラがどんなキャラクターなのかよく分かる曲。
ヘルメルは、そんなノーラを溺愛している様子。
その愛情表現が、妻を小動物(ひばりさんとか、りすなど)に例えて呼んだり、ちょっと気色悪く感じた。
ペットかなんかみたいに扱われているようで、不快でした…
(大場さんの印象が悪くなる😅 それだけ役がうまいんだよな)
そんな、明るくて、可憐で、幸せそのもののノーラが、どんどん変わっていくところが面白いです。
最後は、ノーラに共感の気持ちでいっぱい。
ノーラ演じる土居さん、歌も立居振舞いも、ちょっとした仕草も、やっぱ舞台女優だなーと見惚れてしまう。
話し声と歌声が変わらないの。すっごい自然なんですよね。
そして、声が湧き出るように自然に出てくるところもすごい好き。
歌の安定感、演技、素晴らしかったです。
ノーラを取り巻く3人の男性
すっごいイヤな男で胡散臭さ漂う男、クロクスタ。
自分が出世したいがために、ノーラを脅すのですが、憎たらしさ満載でした。
本当に嫌な男ですっ!!
それが、愛を得ることでコロッと変わってしまう。
そうなると、かわいらしくも見えてしまうから不思議。
クロクスタ演じる 畠中洋さん、味があって渋くてステキでした。
歌もとっても良かったです。
カーテンコールで見せた素の畠中さん、かっこよかったです。
そして、ノーラの夫、ヘルメル。
世間体とか、常識とか、自分がどう見られてるかしか考えてない。
所詮、妻は自分を良く見せるためのお飾りでしかないのね。
最後の奥さんへの態度がもー許せない。
(いいぞいいぞ、捨ててやれーと心の中で叫ぶ)
あんなに溺愛していたのに、最後の豹変ぶりにはびっくりですよ。
(と同時に、大場さんの声量にもびっくりした!いいお声!!)
ノーラに捨てられるときも情けないー😩
まさに「男っていうのは」です!!
それをうまく演じてた、大場泰正さん、さすがです。
畠中さん同様、カーテンコールの時の立ち振舞いがジェントルマンでカッコよかったです。
また、第二幕では、ノーラの家に入り浸っているランク先生が、えー!?って思う告白をします!!
おわりに
休憩含む2時間40分、この物語の世界に浸り、歌と芝居を堪能しました。
期待以上に面白い舞台でした。
見終えた後は、小説を一冊読んだかのような見応えと充足感。
俳優座劇場の座席数は300席と小さめなので、より身近に俳優さんたちを感じることがでるのも魅力ですね。
私自身、劇団四季や東宝系の観劇が多いので、久しぶりのこの規模の舞台、新鮮な気持ちで楽しめました。
そして、今回初めて畠中さんを生で見て、是非別の舞台を見たいと!
(ミュージカル『ジキル&ハイド』(2023年3月)に出演されるそうです!要チェック!!)
音楽劇『人形の家』は、東京公演は2022年9月8日~11日、その後地方公演があります。
興味あれば、ぜひ行ってみてください!