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〈映画レビュー〉「家へ帰ろう」

 

Amazonプライムで、映画「家へ帰ろう」を見た感想です。

ホロコースト生還者の、最後の旅路を描いた物語。

結論、とっても良い映画でした。

ラストシーンは久々にむせび泣いてしまうほど大感動。

序盤からから見ていて辛くなるシーンがままあって少ししんどかったのですが、

見終えた後、映画の余韻がじんわり心を温めてくれるような、心に残る素敵な映画です。
 

映画「家へ帰ろう」基本情報

  • 原題:El último traje
  • 英題:The Last Suit
  • 制作国:スペインとアルゼンチンの合作
  • 制作年:2017年

出演

ミゲル・アンへル・ソラ(ブルスティン・アブラハム
アンヘラ・モリーナ(女主人・ゴンザレス)
オルガ・ポラズ(看護師・ゴーシャ)
ユリア・ベアホルト(文化人類学者・イングリッド)
マルティン・ピロヤンスキー(機内の青年・レオナルド)

スタッフ

監督・脚本:パブロ・ソラルス
撮影:フアン・カルロス・ゴメス
音楽:フェデリコ・フシド 『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』『瞳の奥の秘密

あらすじ

アルゼンチンに住む88歳の仕立屋アブラハムは、施設に入れようとしている家族から逃れ、ポーランドへ向かうための旅に出る。
 
目的は、70年前にホロコーストから命を救ってくれた親友に自分が仕立てた「最後のスーツ」を渡すこと。
 
飛行機で隣り合わせた青年、マドリッドのホテルの女主人。
 
パリからドイツを通らずポーランドへ列車で訪れることができないか、と四苦八苦するアブラハムを助けるドイツ人の文化人類学者など、旅の途中で出会う人たちは、アブラハムの力になろうと自然体で受け入れ、手助けする。
 
たどり着いた場所は70年前と同じ佇まいをしていた。
 
アブラハムは親友と再会できるのか、人生最後の旅に“奇跡"は訪れるのか……。
 

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映画「家へ帰ろう」感想

主人公のアブラハムは1927年生まれの88才。
アルゼンチン在住の元仕立て屋です。
かなりのご高齢で、右足が不自由で引きずって歩いている。
物語は、たくさんの家族に囲まれて幸せそうに写真撮影をするシーンから始まります。
この後、老人ホームに入る予定のアブラハムは、家族みんなで撮った幸せそうな写真を持って行って見せびらかしたい様子。
そんな中、一人の孫娘がどーしても写真に加わろうとしません。
その孫との会話を聞いていると、なんだか幸せそうには感じません。
さらに、娘たちはアブラハムを老人ホームに入れた後、家を売り払うとのこと。
 
娘や小生意気な孫もどうかと思いますが、アブラハムの言動も、傍から見ていて、ちょっと一筋縄ではいかないような、ちょっと面倒くさそうなおじいちゃん…
 
いわゆる偏屈で頑固なジジイのアブラハムですが、この後のおじいちゃんの行動力、決断力が素晴らしい。
 
「俺はこのまま娘たちの思うままに、老人ホームに入れられて最期を迎えるのか!」
 
こんな思いがあったのかも。
 
アブラハムは、家族に内緒で故郷ポーランドの友人に、自分が仕立てたスーツを届けに行くことに決めます。

一期一会の出会い

ポーランドまでの道中、アブラハムが出会った人たち。
 
飛行機の中で出会った青年、レオナルド。
今どきの青年って感じですが、入館手続きでアブラハムに助けられ、その後アブラハムに車を出してあげたり、背中を押すような一面も。
 
ホテルのフロントにいた女性、ゴンザレスとは、一緒に夕食に出かけ楽しい時間を過ごします。
彼女とのウィットに富んだ会話が楽しかった。
 
ヨーロッパの女性って、年齢を重ねても素敵なんだよなぁ。
“年をとること“に対して、全く負い目を感じていない。
「私なんて…」てなこと思わないんだろうな~。
憧れるし見習いたいところです。
 
ドイツ人のイングリッドには、フランスの駅で出会うのですが、彼女がドイツ人と知ったとたんにアブラハムは表情が一変。
今でもなお、ドイツという国とドイツ人に対しての憎悪を持っているようで、イングリッドの親切心を受け入れません。
それでも、深い愛と敬意を持ってアブラハムに接するイングリッドに、アブラハムも心を開いていきます。
このイングリッドもとっても素敵な女性。
 
最後に出会うのは、看護師のゴーシャ。
ドイツからワルシャワへ向かう列車内で倒れてしまったアブラハムは、気づくと病院のベッドの上。
そこで看護師をしていたのがゴーシャ。
アブラハムは、ゴーシャに旧友のところまで連れて行ってもらえないか、と頼むのです。
それを快諾するゴーシャ。
車で友人の住む町「ウッチ」まで、アブラハムを送っていきます。
これ、日本で考えられます?
欧米の文化なのでしょうか。
困っている人が目の前にいたら、何も考えず自然にさっと手を差し伸べる。
本当に素敵だなーと思います。
 
一見、偏屈じいさんに見えるアブラハム
でも、ここで出会った彼女らは、そんな表面的な部分だけではなくて、彼という人間に惹かれ、救いの手を差し伸べたんだろうなと、物語が進むにつれて感じるようになりました。

こんな時代だからころ、心に響く物語

未だに戦争がなくならない世界。
かといって、自分が何か変えられるわけではないというもどかしさ。
そんな時は、
「せめて自分の周りにいる人だけは大切に生きよう」
って思うようにしています。
 
物語の中で所々に流れる回想シーンからは、
アブラハムがどんなに辛く悲しい目にあわされてきたか、ひしひしと伝わってきます。
 
これは見ていて辛い。
 
特に、ドイツからワルシャワへ向かう列車内での回想シーンは、本当に辛かった。
 
主演のミゲル・アンへル・ソラ(アルゼンチンの俳優)の演技も素晴らしいくて、
微妙な表情や仕草に気持ちがすっごく表れているのです。
 
ラストシーンの、彼の表情。
本当に素晴らしくて、思い出しても涙が出てくるくらい!
 
アブラハムのファッションもオシャレで素敵。
自分の中のイメージが、最初は“偏屈ジジイ”から、“素敵なおじいちゃん”に変わっていくのが面白かったです。

おわりに

映画は、クスッと笑えるような場面もチラホラありながらも、基本どこか暗~い雰囲気が漂っています。
バックミュージックの影響もあるのかも。
美しいメロディの中に、どこか切なく悲しい音楽が多いです。
でもその分、ラストシーンの感動が大きいのかも。
ハッピーエンドで本当に良かった!
その後のアブラハムはどんな余生を送ったのかな…
ホロコースト生還者の、最後の旅路を描いた感動物語、おすすめです!

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