〈映画レビュー〉「最強のふたり」 どんな時にも人生には意味がある
映画「最強のふたり」を見た感想です。
実話をもとにしたこの映画、暗いテーマを扱いつつも、笑いがふんだんに取り入れられているので、比較的楽しく見ることができます。
私の場合、悲しくて泣く場面はありませんでした。
逆に、心が温まってポロっと涙する場面はありました。
そして、生きる意味について深く考えさせられた映画でもありました。
映画「最強のふたり」について
【あらすじ】
事故で全身麻痺となり、車いす生活を送る富豪と、図らずして介護役に抜擢されたスラム出身の黒人青年。共通点はゼロ。高級住宅地とスラム、ショパンとクール&ザ・ギャング、超高級スーツとスウェット、洗練された会話と下ネタ、車いすとソウル・ミュージックに乗ってバンプする身体―。二人の世界は衝突し続けるが、やがて互いを受け入れ、とんでもなくユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。
引用:prime videoより
【映画情報】
タイトル:最強のふたり
監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
制作:フランス/2011年
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ 他
「障害者」と「健常者」
一般的に私たちは、障害者に対して身構えてしまうところがあると思うのです。
「同情してはいけない」
「健常者と同じように接しなければ」
「こうしたら不快に思うかな」
・・・といったように。
そこに『壁』が出来てしまうんですよね。
ドリスは、フィリップに対して常に『対等』です。
下品なジョークもお構いなしに言います。
画廊に行ったときの話。
フィリップは静かに絵を見ています。
その横で、袋に入ったチョコレートをパクパク食べてるドリス。
フィリップはドリスに「私にもチョコをくれ」と言うと
「これは健常者用だからあげない」と言うのです。
ポカンとするフィリップ。
するとドリスは、大笑いながら「冗談だよ」と言います。
そこでフィリップは「冗談か~」と笑顔をみせるのです。
なんと懐の深い人なのだ!と。
これってブラックジョーク?
私には理解できないし、そんな差別的な発言、絶対言えないよなーと思うのですが…
ちょっと衝撃的なシーンでした。
年齢も、育った環境も、経済状態もまったく違う二人だけど、常に対等な関係性。
タイトル通り、まさに「最強のふたり」だな、と。
他にも、ドリスの行動力には驚かされます。
ちょっと強引だったり、デリカシーがないなーなんて思う場面もありますが、そのドリスの行動や言葉が周りを良い方向へ導いていくのです。
行動力だけではなく、心の底から優しいんですよね。
人間力のある人だなぁと。
面接でそこまで見抜いていたフィリップも凄いと思いました。
ラストのシーン、二人の笑顔がとても印象的でした。
なんとも言えない、幸せな笑顔だったなー。
「生きる意味」について考える
『どんな時にも人生には意味がある』
これは、オーストリアの精神医学者、ヴィクトール・E・フランクルの言葉です。
今回この映画を観て、全ての物事には何らかの意味があって私たちはここに存在している、と強く感じました。
パラグライダーの事故で四肢麻痺になったフィリップは、絶望のどん底にいたことでしょう。
様々な苦悩を乗り越え、生きる意味を見出し、『今』を生きています。
またこの映画には、貧困や格差問題といった暗い部分も多く描かれている。
しかし、そんな暗さを感じさせないくらい『笑い』もふんだんに取り入れられています。
監督のエリックは「笑いが映画の中の悲しい瞬間を救ってくれる」と話し、半分は笑いの要素を入れたのだそうです。
映画の中で、フィリップやドリスはたくさんの笑顔を見せてくれます。
映画「最強のふたり」出演者について
★フランソワ・クリュゼ(フィリップ役)
「ドキュメンタリー:最強のふたり」で語っていたのですが、役作りには苦労したそうです。
「自分は動きで表現したいタイプの役者だ」と語っていました。
でも、表情とか、発する言葉もそうですが、とても素晴らしく、すっと入ってきました。
実際のフィリップがフランソワの演技について
「教えていないのに、彼の演技には『苦しみ』を感じた。鏡に映った自分とそっくりだった」
と語っています。
★オマール・シー(ドリス役)
元々はコメディアンだったそうです。
監督がどうしても彼を起用したく、実話と少し設定を変えたとのこと。
オマール・シーは、フィリップについて次のように語っています。
「役作りのために役作りのためにフィリップに会うのが怖かった。
どんな顔をして会えば良いのかと。
でも会ってすぐ心配は吹き飛んだ 。
彼のその生き生きした目を見た瞬間、彼の人間的な魅力に引き込まれた。
品や威厳を感じる目だった。」
(引用:「ドキュメンタリー:最強のふたり」)
この映画に登場する女性たちも印象的でした。
フィリップの秘書をしているマガリーは、ドリスに口説かれても気の利いたジョークで返します。
イヴォンヌは一見、真面目でちょっと怖そうだけど、実は明るくてチャーミングな人。
介護士のマルセル、金髪のラフなショートヘアが素敵。
さすが『オシャレ大国』フランス!
ナチュラルで着飾ってないのに、なぜかオシャレな女性って感じ。
憧れます~
「ドキュメンタリー:最強のふたり」もおすすめ!
実際のフィリップやドリスのモデルとなった介護士のアブデルへのインタビューや、監督、俳優が撮影の裏話やメッセージを語っています。
映画「最強のふたり」をより深く理解するためにオススメです!
このドキュメンタリーの中で、フィリップは次のように語っていました。
不平は無益だ
文句を言ってないで笑顔で人を魅了しないと
人が来るのを待つのではなく、自分から行くんだ
人生とは堅苦しいものではない
本質的には冗談みたいなものだ
だから思いきり楽しむべきだ
制限なしに
事故に合う前から同じことを思っていた
アルデルも同じだと、初めて会った時直感でわかった
同じ哲学を持っていると
(ドキュメンタリー:最強のふたり より)
そして、アブデルはこのように話しています。
俺は俺
型にはまるのはごめんだ
人と同じであることが正常なのか?
自分は今のままで十分正常だ
(ドキュメンタリー:最強のふたり より)
おわりに
ドキュメンタリーの最後に、フィリップはこんなことを話しています。
とっても心に響きました。
「懐かしむ」という行為は非常に危険だ
「期待」もそうだが
無分別に頼ると痛い目に合う
現実と向き合えなくなるんだ
私が愛するのは目覚めのコーヒーだ
朝の一杯は絶対に欠かせない
(ドキュメンタリー:最強のふたり より)
どんなメッセージが込められていると思いますか?
私は「現実を受け入れ、過去ではなく未来に目を向け、『今』を精一杯生きよう」というメッセージに感じました。
学ぶことの多い映画。
繰り返し見たい映画の一つです。